■ショーロ
19世紀末期ごろには、ラテン系の様々な国でサロン音楽の発展形とも言える音楽が生まれた。アルゼンチンのタンゴ、キューバのハバネラといった音楽である。そんな中、ブラジルにおいてはショーロという器楽が生まれた。
このショーロを産みだしたのは高名な作曲家などではなく、パーティなどで演奏していたアマチュア音楽家たちであった。当時のアマチュア音楽家には、郵便配達人や役所勤めの公務員が多く、仕事が終わると楽器をもって街に繰り出し、様々なパーティでダンス・ミュージックを披露していた。そのような演奏家たちが、休憩時間に酒を飲みながら、もしくはパーティ後に分け前を前に行った即興演奏から生まれた音楽がショーロであるとされている。このショーロはジャズのようにも聞こえるが、ジャズに先駆けて作られたブラジル独自の音楽である。
ショーロはChorar(泣く)というポルトガル語が語源であるとされる。それは、ギターの低音とアクセントを後ろに置いたカバキーニョのリズムが、泣いているように感じられるためである。あまり有力ではない説には、アフロ・ブラジル系の人々がパーティやダンスを指す言葉として使っていた「ショロ」という言葉が語源とであるというものもある。ショーロの演奏者はショラォン(泣き虫)、このスタイルを専門にする演奏グループをショーロィンス(泣き虫たち)呼ばれていた。
初期のショーロは、ワルツ、ポルカ、ショッチ、カドリーユ、マズルカなどのヨーロッパの舞踏音楽にアフロ・ブラジルのシンコペーションを取り入れたスタイルの事を指したが、次第に、フルート(メロディ。後の時代にはギター等がメロディをとることもある)、カバキーニョ(リズム)、ギター(ベース音)による演奏スタイルの事を指すようになる。現在では、メロディを他の楽器で演奏したりギターやピアノの独奏も生まれてきたので、ポルカと原型にした2拍子の形式の音楽をショーロと呼んでいる。
ショーロが生まれた頃はポルカとの判別が難しかったが、20世紀にはいると、3部構成(A−B−A−C−A)の形を取りテンポはミディアム以上という典型的なショーロのスタイルが確立される。1920年頃に歌がつくようになり、ショーロ=カンサォン、サンバ=ショーロなどが発生、その楽器編成も崩れはじめた。
1940年代には、ギターの低音をやめサンバのリズムを用い、華やかでテクニカルなメロディーを重視するという商業的なスタイルが生まれ注目を浴びたが、次第にショーロの人気は下降線をたどるようになる。しかし、それでも多くのアーティストを排出し、70年半ばに現代的なアレンジのショーロが登場したことにより、再認識されることになる。
ショーロはブラジルにおいて人気の浮沈が激しいが、クラシックにおいてはエイトール・ヴィラ=ロボスがショーロに着想を得た曲を作り、ポピュラー・ミュージックにおいては、アントニオ・カルロス・ジョビンの「シェガ・ジ・サウダージ」のようにショーロの影響を受けた音楽が作られた。サンバにショーロの器楽が取り入れられたり、ショーロ的要素が他のブラジル音楽に見られることなどから、ブラジル人の音楽観に大きな影響を与えているものであることは否定できないだろう。
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